企業の高校訪問は、ハローワークで確認を受けた求人票を持って原則7月1日以降に高校の進路指導の先生を訪ね、自社を理解してもらって学校経由の応募につなげる高卒採用の中核業務です。2027年3月卒の日程は、6月1日にハローワークで求人の受付開始、7月1日に学校への求人申込みと訪問の開始、9月5日に学校からの応募書類の提出開始(沖縄県は8月30日)、9月16日に選考と内定の開始で、生徒とのやり取りはすべて学校を通じて行います。
「社長に地元の工業高校を回ってこいと言われたが、大卒採用と何が違うのか分からない」「求人票を郵送しているのに応募が来ない」──高卒採用を任された人事担当者から、よく聞く声です。高校訪問は求人票を置いてくる場ではなく、進路指導の先生に「この会社なら生徒を任せられる」と判断してもらう場です。
本記事では、2027年3月卒の公式日程とルールを押さえたうえで、訪問する高校の選び方、アポ取り、持参物と当日の流れ、職場見学の受け入れ、都道府県で異なる一人一社制までを、実際に動く順番で整理しました。
2027年3月卒の選考は9月16日に始まり、10月からは都道府県ごとに複数応募が可能になる時期に入っています。今から追加の募集をかけたい企業は「高卒採用の学校訪問の時期」の10月以降の進め方から、来年度に向けて準備する企業は「高卒採用の学校訪問ルール」からお読みください。
- 高校訪問とは 企業の高校訪問は、確認済みの求人票を持って進路指導の先生に自社を説明し、職場見学と学校からの推薦につなげる活動です。
- 訪問できる時期 求人活動としての訪問は原則7月1日以降で、学校の事前の了解があればハローワークに求人を申し込んだ日以降も訪問できます。
- 求人票のルール 学校に出せるのはハローワークの受理・確認を受けた求人票で、この手続きによらない求人には学校は生徒を推薦しません。
- 持参するもの 確認印のある求人票の写し、会社案内、職場見学の案内、高卒で入社した社員の紹介資料、名刺の5点が基本です。
- 応募のルール 応募は学校経由で全国高等学校統一用紙により受け付け、一人一社制の期間や複数応募が可能になる日は都道府県ごとに異なります。
- 目的別おすすめの結論 高校との関係づくりまで手が回らない場合は、高校を含む全校種に対応する深コミット型代行の活用も選択肢です。
※ 日程・ルールは文部科学省・厚生労働省の通知(令和8年2月25日付)と、各都道府県高等学校就職問題検討会議の申合せ(令和8年6月現在)に基づきます。最終確認日:2026年10月7日時点。
| 日付 | 公式の取り決め | 高校訪問での企業の動き |
|---|---|---|
| 2026年6月1日 | ハローワークで求人申込みと、確認のための求人票の受付が始まる | 職種・就業場所ごとに求人を申し込む。学校の事前の了解があれば、申し込んだ日以降の訪問もできる |
| 2026年7月1日 | 確認済み求人票の企業への返戻、学校での求人申込みの受理、文書募集が始まる | 確認印のある求人票を持ち、優先度の高い高校から訪問する |
| 求人公開後〜応募前 | 応募前職場見学(採用選考の場にしない) | 学校経由で申込みを受け、会社説明と職場案内に徹する |
| 2026年9月5日(沖縄県は8月30日) | 学校からの応募書類(推薦)の提出が始まる | 全国高等学校統一用紙で受け付け、独自の書類は求めない |
| 2026年9月16日 | 選考・採用内定が始まる | できる限り速やかに採否を決め、学校を通じて通知する |
| 10月1日〜11月1日(都道府県ごと) | 1人1社の期間が終わり、複数応募が可能になる(7府県は条件付きで当初から可) | 未充足なら求人を追加し、高校へ届け直す。自社と訪問先の都道府県の申合せを確認する |
※ 2027年3月卒(令和8年度)の日程です。出典:厚生労働省「中学校・高等学校卒業予定者の就職・採用活動時期について」、文部科学省・厚生労働省の通知(令和8年2月25日付)。2028年3月卒の日程は2026年10月7日時点で未公表です。
- 企業の高校訪問とは|高卒採用で学校訪問が欠かせない理由
- 高卒採用の学校訪問ルール|求人票・訪問開始日・生徒への接触
- 高卒採用の学校訪問の時期|6月の求人申込みから選考後まで
- 訪問する高校の選び方|学科・通勤圏・実績で優先順位をつける
- 高校訪問のアポ取り|進路指導部への連絡で押さえる3点
- 高校訪問の持参物と当日の流れ|先生に伝えるべき4つの情報
- 職場見学の受け入れ|応募前見学で守るべきルール
- 一人一社制と複数応募|都道府県で異なる応募・推薦ルール
- 選考後も続く進路指導部との関係|報告と翌年への引き継ぎ
- 高校訪問でやってはいけないNG行動7つ
- 企業の高校訪問に関するよくある質問(FAQ)
- 目的別おすすめ|高校訪問を自社内製で回すか代行に任せるか
- まとめ|高校訪問はルールの順守と「顔の見える会社」づくりで決まる
企業の高校訪問とは|高卒採用で学校訪問が欠かせない理由
企業の高校訪問とは、人事担当者が高校の進路指導部を訪ね、ハローワークで確認を受けた求人票と職場の実情を先生に直接伝える採用活動です。高卒採用では生徒が先生と相談しながら応募先を決めるため、先生に自社を理解してもらうことが応募の入口になります。
高卒採用は「ハローワーク」と「学校」を通す仕組みで動く
高卒採用の求人は、ハローワークで確認を受けてから学校に申し込み、生徒は学校を通じて応募します。流れは次の順序です。
- 企業がハローワークに求人を申し込む
- ハローワークが求人を受理し、求人票の内容を確認する
- 企業が確認を受けた求人票で、高校に求人を申し込む
- 高校が生徒の応募を取りまとめ、企業に推薦する
生徒は学校から付与されたIDを使い、「高卒就職情報WEB提供サービス」に掲載された求人を家庭でも見られます。ただし通知では、生徒が企業に連絡するときは必ず学校を通じて行うと定められています。求人が生徒の目に届く経路はあっても、応募の窓口は学校だけです。就職情報サイトなどを通じて企業が学生と自由にやり取りできる大卒採用とは、ここが前提から違います。
求人倍率3.60倍の市場で、先生に「勧める材料」を渡す場になる
2027年3月卒の高卒求人倍率は3.60倍(2026年7月末現在)で、求人約45万9千人に対して求職者は約12万7千人です。前年同期より0.09ポイント低下したものの、求人が求職者を大きく上回る状態は続いています(出典:厚生労働省「高校・中学新卒者の求人・求職状況(令和8年7月末現在)」)。
生徒は多くの求人票を見比べて応募先を選ぶ立場にあり、給与や休日といった条件だけでは他社と差がつきにくくなっています。職場の実情や入社後の育成体制を先生に直接伝える高校訪問は、先生が生徒に自社を勧めるときの材料を渡す場になります。
大学・短大・専門学校への訪問との違い
大学・短大・専門学校への訪問と比べると、高校訪問には次の3つの違いがあります。
- 接触相手:高校は進路指導主事や進路指導部長。大学・短大・専門学校はキャリアセンターや就職課
- 日程:高校は全国統一の日程が決まっている。大卒採用は比較的自由に動ける
- 学生への接触:高校は学校経由に限られる。大卒採用は学生と直接やり取りできる
全校種に共通する訪問の進め方は学校訪問の採用のやり方(全校種共通の10ステップ)、校種ごとの戦略の差は大学・短大・専門学校別 学校訪問の戦略の違いで整理しています。
高卒採用の学校訪問ルール|求人票・訪問開始日・生徒への接触
高卒採用の学校訪問ルールは、ハローワークの受理・確認を受けた求人票で学校に求人申込みを行い、その日以降に訪問することが原則です。生徒への連絡や応募の受け付けはすべて学校を通じて行い、応募書類も全国高等学校統一用紙に限られます。
求人票はハローワークの受理・確認が前提
高校に申し込めるのは、ハローワークの受理・確認印が押された求人票だけです。通知では、この手続きによらない求人に対して学校は推薦を行わず、確認印のある求人票の提出を求めることとされています。郵送でも訪問でも、学校に届ける求人票は必ず確認を受けたものにします。
なお、民間の職業紹介事業者を活用して求人を出す場合は扱いが異なります。その場合も、推薦・選考の開始日と全国高等学校統一用紙の使用は同じく守る必要があります。
7月1日より前に訪問してよいか
求人活動のための学校訪問は、ハローワークで確認を受けた求人票で学校に求人申込みを行った日以降が原則で、2027年3月卒では7月1日以降にあたります。例外として、学校の事前の了解の下であれば、ハローワークに求人を申し込んだ日以降も訪問できます(文部科学省・厚生労働省の通知(令和8年2月25日付))。
ただし、確認済みの求人票が企業に返されるのは7月1日からです。例外の範囲で6月に訪問しても、その時点では求人票を先生に渡せません。また、求人を目的としない時期の訪問をどこまで受け入れるかは学校によって異なります。訪問先の学校の意向と、管轄のハローワークの案内に従ってください。
生徒・保護者への連絡と文書募集のルール
企業が生徒や保護者に直接連絡して応募を勧めることはしません。求人広告など文書による募集を行う場合にも、次の条件があります。
- 文書募集を始められるのは7月1日以降
- 内容はハローワークで確認を受けた求人票と同じにする
- 管轄のハローワーク名と求人番号を載せる
- 応募の受け付けは、学校またはハローワークを通じて行う
応募書類は全国高等学校統一用紙のみ
高卒採用の応募書類は全国高等学校統一用紙に限られ、独自のエントリーシートや作文の提出は求めません。統一用紙の履歴書は、企業が「手書き」「パソコン入力」「どちらでも可」のいずれかを指定できますが、作成方法によって有利・不利をつけてはならないとされています。
高卒採用の学校訪問の時期|6月の求人申込みから選考後まで
高卒採用の学校訪問の時期は、6月にハローワークへ求人を申し込み、7月1日の求人受理開始から8月までに優先度の高い高校を回るのが基本です。9月は応募書類の受け付けと選考、10月以降は複数応募期の追加募集と翌年度の準備に移るため、訪問の目的を時期ごとに切り替えます。
日程は全国共通で、前年度から変わっていない
高卒採用の日程は、全国高等学校長協会、主要経済団体(日本経済団体連合会・日本商工会議所・全国中小企業団体中央会)、文部科学省、厚生労働省が取りまとめ、全国共通で運用されています。2027年3月卒の日程は2026年2月16日に公表され、前年度からの変更はありません。各日付は冒頭の日程表のとおりです。2028年3月卒の日程は、2026年10月7日時点ではまだ公表されていません。
6月|ハローワークへの求人申込みと訪問校リストの確定
6月1日から、ハローワークで求人の申込みができます。並行して訪問校リストを確定し、7月の訪問日程を電話で打診しておくと、求人の受付が集中する7月上旬に慌てずに済みます。求人票を高校に渡せるのは7月1日以降なので、6月中の連絡は日程の調整が中心になります。
7月|優先度の高い高校から訪問を始める
7月1日からは、確認印のある求人票を持って高校を訪問できます。最優先校は7月1日直後(1日〜12日が目安)に訪ね、それ以外の学校は7月中旬以降に分散させます。7月上旬は各社からの求人が集中して先生が忙しい時期なので、訪問は短時間で要点を伝えることを心がけます。
8月|職場見学の受け入れと先生へのフォロー
夏休みに入る8月は、応募前の職場見学の受け入れが中心になります。見学を終えたら、生徒の様子や出た質問を先生に伝えておくと、9月の応募に向けて先生が生徒と相談するときの材料になります。見学の受け入れ方は「職場見学の受け入れ」で詳しく説明します。
9月|応募書類の受け付けと選考・内定
9月5日(沖縄県は8月30日)から、学校を通じて応募書類(推薦)が届き始め、9月16日から選考と内定が始まります。選考を終えたら、できる限り速やかに採否を決め、結果は学校を通じて通知します。
10月以降に動き出す企業の進め方
10月以降に動き出しても、就職先が決まっていない生徒に向けて追加の求人を届ければ、採用につながる可能性はあります。前年度の例では、2026年3月卒の高校生の就職内定率は2025年10月末時点で76.0%(文部科学省調査)で、10月末でも就職希望者のおよそ4人に1人は内定前でした。この時期に動く場合は、次の順で進めます。
- 自社と訪問先の都道府県で、複数応募が可能になる日を確認する(「一人一社制と複数応募」の表を参照)
- その日以降に、ハローワークで求人の追加を相談し、高校へ求人を届け直して再訪問する
- 2028年3月卒に向けては、日程の公表を確認したうえで、4〜5月に訪問校リスト・求人内容・職場見学の受け入れ体制を整える
高卒採用に限らず採用手法全体から見直したい場合は、中小企業の新卒採用方法も参考になります。月ごとの細かな動きは高校への学校訪問の月別スケジュールにまとめています。
訪問する高校の選び方|学科・通勤圏・実績で優先順位をつける
訪問する高校の選び方は、募集職種と相性のよい学科があるか、生徒が通える範囲にあるか、過去に応募や採用の実績があるかの3点で優先順位をつけるのが基本です。すべての高校を同じ頻度で回るより、優先校に訪問を集中させるほうが先生との関係が深まります。
学科と職種の相性を見る
募集職種と学科の相性は、応募の集まりやすさを左右します。目安は次のとおりです。
- 工業科:製造職・技能職
- 商業科:事務職・販売職
- 普通科・総合学科:幅広い職種。ただし普通科は就職希望者が少ない学校もある
- 定時制・通信制:働きながら学んできた経験のある生徒もいる
なお、通知では、定時制・通信制の卒業者と全日制の卒業者の間で差別的な取扱いをしないよう求められています。
通勤圏と生徒の移動手段を確かめる
高校生の多くは自家用車を持っていないため、公共交通機関で通えるか、自転車やバイクでの通勤が認められているか、寮や社宅があるかが応募を大きく左右します。これらは求人票に明記し、訪問のときにも最寄り駅やバス停からの行き方とあわせて説明します。
実績のある学校から優先度A・B・Cに分ける
訪問校は、次の3段階で優先度を決めておくと、限られた時間を配分しやすくなります。
- 優先度A:過去に応募・採用の実績がある学校、または卒業生が在籍している学校
- 優先度B:学科・通勤圏は合うが、まだ実績がない学校
- 優先度C:情報収集のため、年1回程度連絡する学校
優先度Aの学校は、7月1日直後に訪問します。訪問校の情報が少ない場合は、管轄のハローワークに相談してください。通知には、ハローワークが企業の採用担当者と高校の進路指導担当教諭との情報交換会や、合同企業説明会などを開くことが記されています(開催の有無は地域によって異なります)。リストの作り方は訪問校リストの作り方(優先度3段階)でも解説しています。
指定校求人と公開求人を使い分ける
特定の高校に推薦を依頼する場合は、求人申込書とともに「推薦依頼高校一覧」をハローワークに提出します(指定校求人)。一方、学校を指定しない求人(公開求人)では、学校は必ずしも校内選考を行う必要がないと通知で示されています。関係のある高校から確実に推薦を受けたいなら指定校求人、広く応募を募りたいなら公開求人というように、目的に合わせて選びます。
高校訪問のアポ取り|進路指導部への連絡で押さえる3点
高校訪問のアポ取りは、進路指導主事または進路指導部長を名指しし、会社名・事業内容・求人票を持参したい旨を短く伝えるのが基本です。全日制は10〜11時か15〜16時、定時制は13時半以降に電話するとつながりやすく、求人の受付が集中する7月上旬を避けて6月中に日程を打診しておくと確実です。
| 押さえる点 | 内容 |
|---|---|
| 名指しする相手 | 進路指導主事または進路指導部長 |
| 伝える3要素 | 会社名と所在地/事業内容と募集職種/求人票を持参して説明したい旨と所要時間 |
| 電話する時間帯 | 全日制:10〜11時または15〜16時/定時制:13時半以降 |
電話で日時を決めたら、訪問日時・訪問者・持参する資料を書いた確認のメールを送っておきます。電話で約束し、メールで記録を残しておくと、日時や持参物の行き違いを防げます。電話での具体的な言い回しは高校進路指導部へのアポ取り電話の逐語スクリプト、メールの書き方は初回連絡・再依頼・御礼のメール文面例で紹介しています。
高校訪問の持参物と当日の流れ|先生に伝えるべき4つの情報
高校訪問の持参物は、確認印のある求人票の写し、会社案内、職場見学の案内、高卒で入社した社員の紹介資料、名刺の5点が基本です。当日は先生の時間を取りすぎないよう要点を絞り、仕事内容・職場環境・育成体制・見学の受け入れ方の4つを具体的に伝えます。
持参物チェックリスト
- ハローワークの受理・確認印がある求人票の写し(受理印のあるものを複写して使う)
- 会社案内(事業内容が一目で分かる簡潔なもの)
- 応募前職場見学の案内(候補日・所要時間・集合場所・服装・交通手段・申込みは学校経由である旨)
- 高卒で入社した社員の紹介資料(入社年・仕事内容・先輩の声。その高校の卒業生がいれば最優先で載せる)
- 名刺(同行者がいれば全員分)
指定校求人の場合は、受理印のある推薦依頼高校一覧の写しも持参します。大学や専門学校への訪問と違い、高校訪問ではハローワークで確認を受けた求人票と職場見学の案内が持参物の中心になります。大学・専門学校向けの持参資料は別の記事で紹介しています。
当日の流れ
訪問当日は、次の6つのステップで進めます。
- 挨拶と名刺交換:時間を取ってもらったお礼を伝える
- 求人票の説明:仕事内容・勤務時間・休日・給与など、求人票の要点を説明する
- 育成体制と職場の様子:入社後の研修や指導役の先輩、高卒で入社した社員の働きぶりを伝える
- 職場見学の案内:候補日と、申込みは学校を通じて受け付けることを伝える
- 先生からの質問:生徒や保護者が気にしそうな点に答える
- 次回の連絡方法の確認:見学の申込みや追加の質問をどこへ連絡すればよいかを確かめる
訪問は、先生が対応しやすい少人数で行います。
先生に聞いておくこと
説明だけで終わらせず、次の点を先生に聞いておくと、その学校に合わせた求人や見学の内容を考えやすくなります。
- 就職希望者の数と傾向
- 校内選考の時期
- 職場見学の受付方法
- 過去の主な就職先
- 保護者が気にしている点
服装と手土産の考え方
高校訪問に手土産は原則不要です。自治体や学校法人の倫理規程によっては教職員が事業者からの贈り物を受け取れない場合があり、持参しても辞退されることがあります。服装はスーツが基本です。服装や名刺交換、訪問後のお礼までの作法は学校訪問のマナーと当日の流れ(服装・手土産・お礼メール)で詳しく解説しています。
職場見学の受け入れ|応募前見学で守るべきルール
応募前の職場見学は、生徒が仕事と職場への理解を深めるための機会であり、採用選考の場にしてはいけません。会社説明と職場の案内に徹し、面接と受け取られる質問や内定をほのめかす発言を避け、申込みと日程の調整は学校を通じて行います。
見学で企業がしてよいこと・してはいけないこと
見学で企業がしてよいことと、してはいけないことは次のとおりです。
| してよいこと | してはいけないこと |
|---|---|
| 会社の説明 | 志望動機や家族のことを尋ねるなど、面接と受け取られる質問 |
| 職場の案内と仕事の実演 | 筆記試験・作文・適性検査などの課題 |
| 若手社員との交流 | 内定と受け取られる話 |
| 生徒からの質問への回答 | 応募前のアルバイトへの勧誘 |
※ 文部科学省・厚生労働省の通知(令和8年2月25日付)および神奈川労働局「高卒求人受理に係る確認事項」をもとに整理。地域の取り扱いは管轄のハローワークで確認してください。
生徒と学校の負担に配慮する
応募前の職場見学は、日程・回数・交通手段に配慮して設定します。通知でも、生徒に「過度な負担や学校における教育活動への影響が生じないよう」配慮することが求められています。複数の候補日を用意する、所要時間と集合場所までの交通手段を案内に明記するなど、生徒と学校が参加しやすい形を整えます。
見学後は先生に報告する
見学が終わったら、生徒の様子や出た質問を先生に共有します。予定していた生徒が来なかった場合も、生徒に直接連絡するのではなく、学校を通じて連絡します。
学校の職場体験・実習とは分けて考える
学校が教育活動として行う職場体験や実習は、推薦・選考の開始日より前でも実施できます。ただし、これは採用選考とは別のものです。受け入れる場合も選考や勧誘にはつなげず、教育活動として切り離して扱います。
見学で生徒を迎える社員へのルール共有
2026年10月1日から、採用面接や就職説明会、インターンシップなどに参加する求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が、事業主の義務になりました(求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置(厚生労働省))。職場見学で生徒を迎える社員にも、社内の対応ルールと相談窓口を共有しておきます。
一人一社制と複数応募|都道府県で異なる応募・推薦ルール
一人一社制とは、一定期間、生徒1人が1社にだけ応募・推薦を受ける高卒採用の仕組みで、運用は都道府県ごとの申合せで決まります。2027年3月卒は7府県が条件付きで当初から複数応募を認め、残る40都道府県は10月1日から11月1日までの間で県ごとに定めた日以降に複数応募が可能になります。
一人一社制が企業にもたらすこと
一人一社制のもとでは、応募してくる生徒にとって自社はほぼ第一志望なので、内定辞退が少なくなります。一方で、生徒の応募が他社に集まれば、最初の期間は応募が0人ということも起こります。そのため、7〜8月の訪問と職場見学で、生徒と先生に「選ばれる1社」になる準備が欠かせません。
2027年3月卒の都道府県別の区分
2027年3月卒の応募・推薦方法は、都道府県ごとに次の4つの区分に分かれます。
| 区分 | 都道府県(主な条件) |
|---|---|
| 当初から複数応募可(7府県) | 秋田(県内求人のみ1人3社)、茨城・大阪(指定校求人以外の公開求人で、求人者が複数応募を認めた場合に1人2社)、埼玉(求人者が複数応募を可能とした場合に原則2社)、愛知(指定校以外の複数応募可の求人は1人2社。指定校求人は10月31日まで1人1社)、和歌山(県内企業で、求人者が複数応募を認めた場合)、沖縄(1人3社) |
| 9月中は1人1社、10月1日以降は複数可(23都県) | 青森・岩手・宮城・山形・福島・栃木・群馬・千葉・東京・神奈川・新潟・福井・滋賀・鳥取・広島・山口・香川・愛媛・高知・佐賀・大分・宮崎・鹿児島(福島・滋賀・高知・佐賀は事業主の承諾や未充足求人などの条件付き) |
| 10月中旬まで1人1社、10月15日・16日以降は複数可(7府県) | 山梨・長崎(10月15日以降)、長野・静岡・京都・徳島・熊本(10月16日以降) |
| 10月31日まで1人1社、11月1日以降は複数可(10道県) | 北海道・富山・石川・岐阜・三重・兵庫・奈良・島根・岡山・福岡 |
※ 令和9年3月卒業者の応募・推薦方法(令和8年6月現在)。社数の上限(2社・3社など)や条件は都道府県ごとに異なるため、厚生労働省「都道府県別の応募・推薦方法(令和9年3月卒業者)」で確認してください。
茨城・埼玉・大阪・和歌山・愛知では、求人者が複数応募を認めるかどうかで当初からの扱いが変わるため、求人申込みの段階で自社の方針を決めておきます。
他県の高校を訪問するときの注意
自社とは別の都道府県にある高校を訪問するときは、訪問先の県と自社がある都道府県の両方の申合せを確認します。青森・宮城・埼玉・千葉・東京・岐阜・愛知・兵庫・和歌山・香川・佐賀・沖縄は、県外(東京は都外)の企業に応募する場合は応募先の都道府県の申合せを適用すると明記しています。新潟・富山・奈良にも同様の趣旨の定めがあります。複数応募が可能になる時期も県ごとに違うため、訪問前に両方の申合せを見比べておきます。
複数応募期に企業が備えること
複数応募が可能になると、生徒は複数の企業に並行して応募できるようになります。企業側は次の3点に備えます。
- 選考結果の通知を急ぐ
- 内定承諾の確認は学校を通じて行う
- 採用予定数に届かない場合は、求人の追加をハローワークに相談する
選考後も続く進路指導部との関係|報告と翌年への引き継ぎ
進路指導部との関係は、選考結果を速やかに伝え、入社後の様子を報告し、翌年度の求人を早めに相談することで続いていきます。先生は卒業生がどう働いているかを気にかけており、その情報が翌年の生徒に自社を勧める材料になります。
選考結果はできる限り速やかに通知する
通知では、選考後は採用内定取消しが生じないよう十分配慮しつつ、できる限り速やかに採否を決定し通知することが求められています。先生は結果を受けて生徒と次の応募先を考えるため、不採用の場合も、学校への連絡は丁寧に行います。
内定後の書類と入社日
内定後に求める書類は最小限にします。地域の例として、神奈川労働局の確認事項では、採用内定後に求めてよい書類は入社承諾書のみとされています。また、新規高卒者が働き始めるのは卒業後です。
入社後の近況を報告し、卒業生と一緒に再訪問する
入社後は、配属先での仕事ぶりや成長の様子、先輩としての声を先生に伝えます。可能であれば卒業生と一緒に母校を訪ね、先生に直接近況を話してもらうと、先生が翌年の生徒に自社の様子を具体的に伝えられるようになります。
先生の異動に備えて記録を残す
4月の異動で担当の先生が替わることがあるため、訪問日・面談した先生・話した内容・次回の予定を記録し、自社の担当者が替わったときの引き継ぎルールも社内で決めておきます。具体的な方法は担当配置と引き継ぎルールの決め方を参考にしてください。大学の就職課との関係づくりとの違いは、大学キャリアセンターとの関係構築と比べると分かりやすくなります。
高校訪問でやってはいけないNG行動7つ
高校訪問でやってはいけないのは、確認を受けていない求人票での募集、生徒への直接の連絡、面接に当たる職場見学、独自の応募書類の要求など、高卒採用のルールに反する行動です。一度ルール違反と受け取られると、その学校からの推薦は途絶えやすくなります。
- ハローワークの受理・確認印がない求人票で求人活動をする
- 生徒や保護者にSNS・電話などで直接連絡し、応募を勧める
- 職場見学で面接や試験に当たる質問・課題を課す
- 全国高等学校統一用紙以外の応募書類を求める
- 家族構成・本籍など、本人の適性や能力と関係のない事項を尋ねる
- 会社の一方的な都合で採用内定を取り消す、入社時期を繰り下げる
- 求人が集中する7月上旬に連絡なしで訪問し、長時間話し込む
このうち5と6は、通知で特に強調されている点です。通知は公正な採用選考を求めるとともに、事業主の一方的な都合による採用内定取消しや入職時期の繰下げを「決してあってはならない重大な問題」としています。面接を担当する社員にも共有しておきましょう。応募者の適性と能力だけで判断する考え方は、公正な採用選考の基本(厚生労働省)で確認できます。
企業の高校訪問に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 企業の高校訪問はどのように進めればよいですか?
企業の高校訪問は、6月にハローワークへ求人を申し込んで確認を受け、原則7月1日以降に確認印のある求人票を持って進路指導の先生を訪ねる流れで進めるのが基本です。訪問では仕事内容と育成体制を具体的に伝え、応募前の職場見学につなげます。訪問する高校は、学科・通勤圏・過去の実績の3点で優先順位をつけて絞り込みます。
Q2. 高卒採用の学校訪問はいつから可能ですか?
高卒採用の学校訪問は、ハローワークで確認を受けた求人票で学校に求人申込みを行った日以降が原則で、2027年3月卒では7月1日からです。学校の事前の了解があれば、ハローワークに求人を申し込んだ日(受付は6月1日開始)以降も訪問できますが、確認済みの求人票が企業に返されるのは7月1日からです。なお、2028年3月卒の日程は2026年10月7日時点ではまだ公表されていません。
Q3. ハローワークに求人を出さずに高校訪問をしてもよいですか?
ハローワークに求人を出さずに高校で求人活動をすることは、原則としてできません。高校への求人申込みにはハローワークの受理・確認を受けた求人票が必要で、この手続きによらない求人には学校は生徒を推薦しません。民間の職業紹介事業者を活用して求人を出す場合は扱いが異なりますが、その場合も推薦・選考の開始日と全国高等学校統一用紙の使用は同じく守ります。
Q4. 高校訪問のアポイントはどう取ればよいですか?
高校訪問のアポイントは、電話で進路指導主事または進路指導部長を名指しし、会社名・事業内容・求人票を持参したい旨を伝えて取るのが基本です。全日制は10〜11時か15〜16時、定時制は13時半以降に電話するとつながりやすくなります。電話の具体的な言い回しは学校訪問のアポ取り|電話・メール例文で紹介しています。
Q5. 高校訪問には何を持っていけばよいですか?
高校訪問には、確認印のある求人票の写し、会社案内、職場見学の案内、高卒で入社した社員の紹介資料、名刺の5点を持参するのが基本です。指定校求人の場合は推薦依頼高校一覧の写しも用意します。
Q6. 高校訪問に手土産は必要ですか?
高校訪問に手土産は原則不要です。自治体や学校法人の倫理規程によっては教職員が事業者からの贈り物を受け取れない場合があり、持参しても辞退されることがあります。服装や当日の振る舞いは学校訪問のマナーで詳しく解説しています。
Q7. 一人一社制とは何ですか?
一人一社制とは、一定期間、生徒1人が1社にだけ応募・推薦を受ける高卒採用の仕組みです。2027年3月卒では7府県が条件付きで当初から複数応募を認め、残る40都道府県も10月1日から11月1日までの間で県ごとに定めた日以降は複数応募が可能になります。都道府県ごとの区分と条件は、本文の一人一社制の表で確認できます。
Q8. 応募前の職場見学で企業がしてはいけないことは何ですか?
応募前の職場見学で企業がしてはいけないのは、面接や試験に当たる質問・課題を課すことと、内定と受け取られる発言をすることです。見学は生徒が職場を理解するための機会で、採用選考の場にしないよう通知で求められています。見学の申込みと日程の調整は、学校を通じて行います。
Q9. 他県の高校を訪問するときに注意することはありますか?
他県の高校を訪問するときは、その高校がある県と自社がある都道府県の両方の応募・推薦の申合せを確認することが欠かせません。東京都・千葉県・埼玉県などは、他の都道府県の企業に応募する場合は応募先の都道府県の申合せを適用すると定めており、複数応募が可能になる時期も県ごとに異なります。
Q10. 10月から高卒採用を始めても間に合いますか?
10月から高卒採用を始めても、就職先が決まっていない生徒に向けた追加の求人で採用できる可能性はあります。10月1日から11月1日にかけて都道府県ごとに複数応募が認められる時期に入るため、ハローワークで求人の確認を受けたうえで、高校へ求人を届けます。前年度は、2026年3月卒の高校生の就職内定率が2025年10月末時点で76.0%でした(文部科学省調査)。
目的別おすすめ|高校訪問を自社内製で回すか代行に任せるか
高校訪問を実務で回す方法は、自社内製・部分代行・深コミット型の代行の3つがあり、訪問校の数と社内の人手によって向く方法が変わります。学校訪問代行サービスの会社ごとの特徴は学校訪問代行サービスを目的別に比較で詳しく整理しています。
自社内製で高校訪問を続けたい企業向け:地元の優先校に絞った専任配置
自社内製で高校訪問を続けたい企業には、訪問校を通勤圏内の優先校に絞り、担当者を固定する進め方が向いています。毎年同じ担当者が訪ねることで先生に顔を覚えてもらいやすく、卒業生の近況も伝えやすくなります。ただし、担当者の異動や退職で関係が途切れないよう、訪問記録と引き継ぎの仕組みを整えておくことが前提です。代行と比べた判断のポイントは学校訪問代行と自社内製の判断軸で整理しています。
訪問校が多い・県外の高校も回りたい企業向け:部分代行(スポット訪問代行)
訪問校が多い企業や、県外の高校まで回りたい企業には、訪問の実働だけを外部に任せる部分代行が向いています。どの高校を優先するか、どんな人材を求めるかといった方針は社内で持ち、訪問の手数を補う使い方です。費用の目安は学校訪問代行の料金相場で確認できます。
高校との関係づくりから本気で任せたい企業向け:株式会社オール
高校との関係づくりから本気で任せたい企業には、株式会社オールが選択肢になります。1991年設立で、福岡を拠点に全国に対応しており、大学・短大・専門学校から高校まで、すべての校種の訪問を扱っています。顧客企業の看板を借りて活動する深コミット型の代行で、求人票を届けるだけでなく、企業に代わって先生との関係を築いていく点が特徴です。厚生労働大臣許可の有料職業紹介事業者(許可番号 40-ユ-300946)として運営されています。詳しくは株式会社オール 公式サイトで確認できます。
全国規模で多数の高校を効率よく管理したい企業向け:株式会社アールナイン
全国規模で多数の高校を効率よく管理したい企業には、業界最大手の株式会社アールナインが選択肢になります。年間3万件規模の代行実績があり、全国に対応しています。複数の拠点で同時に採用を進める企業や、採用人数の多い企業に向いています。詳しくは株式会社アールナイン 公式サイトで確認できます。
なお、代行会社に任せた場合も、訪問開始日や確認済みの求人票といった高卒採用のルールは同じく適用されます。
まとめ|高校訪問はルールの順守と「顔の見える会社」づくりで決まる
企業の高校訪問は、ハローワークで確認を受けた求人票を持って原則7月1日以降に進路指導部を訪ね、職場見学と推薦につなげるのが基本です。公式日程と、自社と訪問先の都道府県の一人一社制を確認し、訪問校を絞って先生に「生徒を任せられる会社」だと伝えることが応募への近道です。
社内に訪問の人手やノウハウが足りない場合は、代行サービスの活用も選択肢になります。高校との関係づくりから任せたい場合は、深コミット型で福岡拠点・全国対応の株式会社オールが有力です。全国規模で多数の高校を管理したい場合は、業界最大手の株式会社アールナインも含めて比較するのが現実的です。各社の特徴は学校訪問代行サービスの比較で確認できます。
あわせて、アポ取りの例文は学校訪問のアポ取り、年間の段取りは人事担当者の学校訪問手順、全校種に共通する進め方は学校訪問の採用のやり方、当日の振る舞いは学校訪問のマナーを参照してください。


高卒採用で応募が来ない企業を見ていると、足りないのは訪問の回数より「先生が生徒に勧める材料」であることが多いと感じます。先生が気にしているのは求人票の条件以上に、職場見学で生徒をどう迎えるか、入社後に誰が面倒を見るかという点です。ルールを守るのは最低条件で、そのうえで先生にとって「顔の見える会社」になれるかが分かれ目です。詳しい経歴は監修者プロフィールをご覧ください。